医学生 山田’s blog

医学生です。医学の面白さを伝えられたらと思います。

【意外と知らない】認知症って実際どんな病気なの?

今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」

 

みなさんこんにちは。医学生の山田です。

【今週の話題】がおじいちゃん・おばあちゃんとのことなので、認知症についての記事を描いてみました。難しい内容もありますが、最後までお読みいただけたら嬉しいです。

 

 

高齢になると認知症が心配ですよね。 

 平成29年の内閣府の調査では、2020年は高齢者の6人に1人が、2050年には高齢者の4人に1人認知症になると予想されています。こんなにたくさんの人が患っている病気ですが、なぜ認知症になるのか、どのように治療するのか等はあまり知られていません。

そこで、とても身近だけど意外と知らない「認知症」という病気について、少しだけ詳しくお話します。

 

[目次]
1.そもそも認知症って? 
2. 認知症の分類
3. アルツハイマー認知症って?
4.認知症の危険因子
5.治療方法について

 

1. そもそも認知症って?

認知症とは、脳に障害が起きることで脳の機能が低下し、日常生活が営めなくなる病気です。

認知症と聞くと、みなさん物忘れを思い浮かべると思いますが、一般的な物忘れと認知症による物忘れは、実際には少し異なります。老化によって起こる物忘れは「思い出すことができない」状態です。一方で認知症は「覚えることができない」状態です。
つまり、映画を見たときに主人公の名前が思い出せないのは普通の物忘れ、そもそも映画を見たこと自体を思い出せないのが認知症と言えます。

このように多くの事を忘れてしまったり、判断能力が鈍ったりするため、認知症の患者さんは日常生活を送ることが大変なのです。

 

2. 認知症の分類

認知症の概要を知っていただけたので、次は、認知症の分類についてお話します。

認知症」という病気はひとまとめにされていますが、実はその原因はたくさんあります。「かぜ」という病気を引き起こすウイルスがたくさんいて、病院に行っても何というウイルスが原因なのかは教えてもらえないのと同じですね。ここでは認知症を引き起こす原因の型についてお話します。

おそらく多くの方が「アルツハイマー認知症」という言葉を聞いたことがあると思います。認知症の大半を占めるとても有名な病気です。

実は、他にも認知症の型はたくさんあります。
大まかに2つに分けると、症状が改善する認知症と改善しない認知症があります。

改善するものは他の病気が原因になっていることが多いです。例としては、うつ病甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠損症、硬膜下血腫などがあります。うつ病甲状腺機能低下症は体全体の機能が落ちてしまう病気です。ビタミンB12は脳内の神経が働くために必要な物質で、それが無くなると神経細胞がダメージを受けてしまい認知症につながります。硬膜下血腫については、事故や転倒などで頭蓋骨の中で内出血を起こすと血の塊ができます。これが悪さをして認知症のような症状が出てしまうのです。
以上で挙げた4つの病気は適切に治療すれば治ります。そのため、認知症になっても回復する可能性はあるのです。

一方で改善しないものは、血管性認知症(約20%)やレビー小体型認知症(約5%)、そしてアルツハイマー認知症などがあります。血管性認知症は、脳梗塞などによって脳内の血管が破れてしまい、その周りの神経細胞が働かなくなる病気です。レビー小体型認知症は、その名の通り「レビー小体」という異常なタンパク質が溜まり、脳の働きを邪魔する病気です。この3つが認知症の大半を占めています。
そのため、残念ながら現在の医学では、認知症の多くは元通りになることは無く、あくまでも進行を抑える治療が行われます。

 

3. アルツハイマー認知症って?

続いて、アルツハイマー認知症について、詳しい病態を説明します。

アルツハイマー型は、「アミロイド」という健常者でも作られる物質が、脳内に異常に溜まってしまう病気です。その結果、脳の神経細胞がダメージを受けてしまいます。
例えて言うならば、脳内に記憶に関わる道路があって、そこに岩が落ちて車が通れなくなり、記憶が定着しない病気なのです。

症状としては、記憶障害、判断能力の低下、時間がわからない、精神状態が不安定などがあります。

脳内でダメージが溜まり続けると、記憶などに必要な様々な経路が萎縮するため、病状がゆっくりと悪化し続けてしまう怖い病気です。

 

4. 認知症の危険因子 

認知症は怖い病気だとわかりましたが、それでは、どのような人が認知症になりやすいのでしょうか。

加齢遺伝的要因の2点がリスクファクターとして知られています。

加齢については、みなさんご存知の通りです。稀に若くして認知症を発症してしまう方もいますが、多くは高齢になってから発症します。アルツハイマー認知症では、アミロイドという物質は発症の10年前から蓄積しているとも言われており、発症までに時間がかかる点からも加齢が危険因子であることは明白です。

また、遺伝的要因も関係しています。

例えば、ダウン症の多くは21番染色体が3本あることに起因しますが(染色体:DNAの集合体。人のDNAは23種類46本の染色体にグループ分けされている。通常は両親から23本ずつDNAを受け取るので、健常者は23*2本の染色体を持つ。ダウン症では1本多くの染色体を持つことが多い)、21番染色体ではアミロイドβを作り出すのでアミロイドβを作りすぎてしまい、健常者よりもアルツハイマー認知症になる可能性が高いのです。

他にも、若年性アルツハイマーの原因となる遺伝子(presenilin-1)や家族性アルツハイマーの原因となる遺伝子(ApoE4)などが知られています。

しかし遺伝性の認知症は全体数から見ると稀なので、むやみに心配する必要はないでしょう。

今まで危険因子について説明しましたが、働き盛りに認知症を発症する方もたくさんいますので、上に該当する方のみが認知症になるわけではありません。あくまでも「危険因子」であり、誰もが認知症になりうることは心に留めておいてください

また、それ以外にも、生活習慣と認知症の関係が示唆されています。規則正しい生活は認知症以外にも、糖尿病や高血圧をはじめとした多くの病気を予防できるので、歳をとっても健康を維持したい方には強くオススメします。

 

5. 治療方法について

先ほど認知症は治らない場合が多いと述べましたが、治療方法がないわけではありません。適切な治療によって症状の進行を抑えたり、場合によっては改善する部分もみられます。

アルツハイマーの認知機能低下を抑える薬としては、リバスチグミンドネペジルガランタミンメマンチン (一般名)が認可されています。

最初の3つは、脳内の神経どうしが連絡をとるために必要な物質(ACh)の分解を抑える薬です。メマンチンは、脳内活動を抑制しているスイッチ(NMDA受容体)をOFFにする薬です。どちらも脳内の神経細胞を活性化することで、認知機能の低下を防ぎます。

ただし、上に挙げた薬は病気の進行を抑えるだけで、元通りに戻すことは難しいです。そのため、もしも身近な方が認知症になってしまった場合は周りの方のサポートが重要になります。

まずは、怪しいと感じたら医療機関への受診をしてください。何事も早期発見が大切です。

これ以上は、医学生の身ではアドバイスは出来ません。あまりに無責任になってしまうので。ただ、適切なサポートを行うことは介護者にとっても、認知症患者にとっても大事なことだと思います。

 

認知症は親しい人や、もしかしたら自分の身に降りかかるかもしれない病気です。正しい知識を身につけ対策しておくことで、いざという時に落ち着いて対処できるのではないでしょうか。

 

以上、長らくお読みいただきありがとうございます。
これからも医学情報を発信して参りますので応援よろしくお願いします。